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グリム童話: 子供たちと家庭の童話
グリム童話の一覧 (ページ 9)
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雪白と薔薇紅
昔、人里離れた小さい家に貧しい未亡人が住んでいました。家の前に庭があり、そこには2本のばらの木がありました。そのばらの木の一本には白い花が、もう一本には赤い花が咲きました。この人には二本のばらの木のような子供が二人いて、一人は雪白、もう一人はばら紅と呼ばれました。二人は善良で幸せで、よく動き、明るい子供で、世界を探してもこんな二人はいないと思われました。ただ雪白の方がばら紅より静かでおとなしいといえました。ばら紅は花を捜したりチョウをつかまえたりして草原や野原を走り回る方が好きでしたが、雪白は母親と一緒に家にいて、家事を手伝ったり、何もすることがないときは母に本を読んであげたりしました。二人の子供たちはお互いが大好きだったので、一緒に外に出るときはいつもお互いの手を握っていました。そして雪白は「私たちはお互いを離れないわ」と言い、ばら紅は「生きてる限りずっとね。」と答え、母親は、「一人が持ってるものをもう一人と分かち合うのよ」と付け加えるのでした。 二人はよく二人だけで森を走り回り、赤イチゴを摘みました。二人に危害を加える獣はいなくて、信用して二人に近づいてきました。子ウサギは二人の手
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賢い下男
主人の命令に耳を傾けるが、従わず、自分自身の賢さに従うのを好む賢い下男がいるとき、その主人はどんなに運が良く、家は万事がどんなにうまくいくでしょう。あるとき、主人は、こういう種類の下男である賢いハンスを行方不明の牛を探しに行かせました。長い間帰ってこないので、主人は、「忠実なハンスは仕事に手を抜かないな。」と考えていました。 しかし、全く帰ってこなかったとき、ハンスになにか悪いことが起こったのではと思い、自分でハンスを探しにでかけました。長い間探さなくてはなりませんでしたが、とうとう若者が大きな野原をあちこち走っているのを見つけました。「なあ、ハンスよ」主人はハンスの近くに来ると言いました。「探しにやった牛を見つけたのかい?」「いいえ、ご主人さま、牛は見つけませんでした。でも牛を探さなかったんです。」とハンスは答えました。「じゃあ、ハンス、お前は何を探しているんだい?」「3羽のつぐみです。」と若者は答えました。「それでどこにいるんだい?」と主人は尋ねました。「一羽を見て、もう1羽を聞いて、3羽目を追いかけているところです。」と賢い若者は答えました。 これを見本にして、主人や主人の命令に
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ガラスの棺
貧しい仕立て屋なんて大きなことを成し遂げ高い名声をえることはできない、と誰にも言わせませんよ。必要なのは適切な場所に行くことだけです。そしてなにより大事なのは幸運に恵まれることです。あるとき、普通の賢い仕立て屋職人が旅に出かけ、大きな森に入りましたが、道がわからなかったので迷ってしまいました。夜になり、このもの寂しい場所でやることは寝る場所を探すことしか残っていませんでした。柔らかい苔の上はきっと寝心地がいいでしょうが、けものたちが怖いのでそこは気が休まりませんでした。そしてとうとう木に登って夜を過ごそうと決心しました。 高い樫の木を探しだし、てっぺんまで登りました。アイロンを持っていたのはありがたいことでした。というのは、そうでなければ木のてっぺんに吹きつける風で仕立て屋は吹き飛ばされていたでしょう。怖くて震えながら暗闇で何時間か過ごした後、かなり近いところに明かりがちらちらしているのが見えました。(あそこに人が住んでいるにちがいない、あそこの方が木の枝にいるよりいいだろう)と思ったので、気をつけて下りてその明かりへ向かっていきました。そうして歩いていくと葦とトウシンソウを編んで作っ
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ものぐさハインツ
ハリーは怠け者でした。毎日ヤギを牧草地に連れていく他に何もやることがありませんでしたが、一日の仕事を終わって家に帰ると、呻くように言いました。「まったくきつい仕事だな。こんなふうに毎年毎年、秋遅くまで、野原にヤギを連れていくのは疲れる作業だよ。横になって眠っていられたらなあ、だけどだめだ、ちゃんと目を開けてなくちゃいけない、そうしないとヤギが若木を食べたり、垣根を通りぬけて庭に入ったり、逃げたりしちゃうから。いったいどうやって休んで楽しく暮らせるんだ?」 ハリーは腰をおろし、あれこれ考えをめぐらし、どうしたらこの重荷を肩からはずせるか考えました。しばらく考えてもどれも役にたちそうもありませんでしたが、突然目からうろこが落ちたようになりました。「わかったぞ!こうするんだ。」とハリーは叫びました。「太っちょトリーナと結婚するんだ。あいつもヤギを飼っているから、おれのヤギも一緒に連れ出してくれるさ。そうしたらおれはもう骨折ってやらなくてよくなるぞ。」 そこでハリーは起きあがり、かったるい脚を動かし、通りをすぐ横切り、太っちょトリーナの両親がすんでいるところに行きました。というのははそれだけし
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怪鳥グライフ
昔、どこの国を治め、何という名前かは知りませんが、王さまがいました。王様には息子がいなくて娘がただ一人いましたが、ずっと具合が悪く、治せる医者がいませんでした。そうして、りんごを食べると娘は健康を回復する、という予言が王さまに伝えられました。そこで王様は、健康を回復するりんごを娘に持ってきた者に娘を妻として与え王にする、というお触れを国じゅうに出しました。 息子が三人いるお百姓がこれを知り、上の息子に、「庭に行って頬の赤いりっぱなりんごをかごいっぱいもってきなさい。そして宮廷に持って行くんだ。ひょっとすると王様の娘はそのりんごを食べて元気になれるかもしれないからな。そうしたらお前はお姫様と結婚し王様になれるぞ。」と言いました。若者はそうして出かけて行きました。少しばかり行くと、白髪の小人に出会いました。小人は、「かごに何が入ってるんだい?」と聞きました。するとユーレは、それがこの若者の名前ですが、「蛙の脚だよ」と答えました。これを聞いて小人は、「そうか、じゃ、ずっとそういうことにしておこう」と言って去って行きました。とうとうユーレは宮殿に着き、りんごをお持ちしました、お姫さまが召しあが
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強力ハンス
昔、子どもが一人しかいない夫婦がいて、人里離れた谷に全く家族だけで住んでいました。あるとき、母親はもみの木の枝を集めに森に入り、二歳になったばかりの小さいハンスを一緒に連れて行きました。春の季節で子どもが色とりどりの花を楽しんでいるので、母親は子どもと一緒に森の奥へと進んでいきました。突然、二人の強盗が茂みから飛びだして、母親と子どもをつかみ、暗い森の奥深くへ連れていきました。そこは今まで何年も誰も来ないところでした。 可哀そうに、母親は、自分と子どもを放してくれるようにとしきりに頼みましたが、心が石でできた強盗たちは母親の頼みに耳を貸そうとはしないで、力づくでさらに遠くへ追いたてました。二マイルほどやぶやいばらをかき分けて進んだ後、戸がついている岩のところにやってきました。強盗たちが戸をたたくと戸はすぐに開きました。長く暗い通路を通って、やがて大きなほら穴にたどりつきました。そこは炉に燃える火で明るくなっていました。壁には刀やサーベルや他の殺しの武器がかかっていて、明かりを反射して光っていました。真ん中に黒いテーブルがあり、そこで他の強盗が四人賭けごとをして座っており、その先に親分が
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天国へ行った水呑百姓
あるとき、貧しい信心深い水のみ百姓が死に、天国の門に着きました。同時に、とてもとても金持ちの領主も、天国に入りたいと思って、そこに来ました。すると、聖ペテロが鍵を持って来て、門をあけ、お偉方を入れましたが、どうやら百姓は見なかったようで、またドアを閉めました。それで外の百姓にはお偉方が天国で大喜びで迎えられ、中で音楽を奏で、歌っているのが聞こえました。 とうとう再び静かになると、聖ペテロがまたやって来て、天国の門を開け、百姓を入れました。ところが、百姓は自分が入って行ったときも音楽を奏で歌ってくれるものと期待したのですが、全く静かなままでした。なるほど大きな愛で迎えられ、天使たちも会いに来てくれたのですが、誰も歌いませんでした。それで、百姓は聖ペテロに、金持ちの男が入っていったときやったようにどうして自分には歌ってくれなかったかと尋ね、天国でも地上と同じくえこひいきで物事は行われているようですね、と言いました。すると、聖ペテロは、「決してそんなことはありません。あなたは他のみなさんと全く同じに大切で、金持ちの人と同じくすべての天国の喜びを味わえるんです。ただあなたのような貧しい人は毎日
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やせたリーゼ
やせっぽちのリサは、何ものにも安らぎを邪魔させないものぐさハリーや太っちょトリナとはとても違う考え方をする人でした。朝から晩まであくせく働き、夫ののっぽのローレンスにとても多くの仕事を担わせたので、夫は3つの袋を載せているロバより重い重量を背負っておりました。しかし、それは何にもなりませんでした、というのは二人には何もなく、何の結果も得られなかったからです。 ある晩、リサはベッドに寝ていて、疲れから腕一本動かせないので、あれこれ考えてまだ眠れないでいました。それで、肘で夫のわき腹をつついて、「ねえ、レンツ、今考えていることを聞いて。もし1フローリン見つけて、1フローリンもらって、それに足してもう1フローリン借りて、あんたがもう1フローリンくれるとすると、4フローリンをまとめてすぐ若い雌牛を買うわ。」と言いました。 夫はこの話がとても気に入りました。それで、「実際、お前がおれからもらいたがっている1フローリンをどこから手に入れたらよいかはわからないよ。だけど、そのお金をまとめて雌牛を買えるなら、お前の計画を実行するのにうまいやり方だよね。」と言い、「嬉しいだろうな、もしその雌牛が子牛を産
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森の家
さびしいもりのはずれの小さな小屋に、貧しい木こりが妻と3人の娘と一緒に住んでいました。ある朝、木こりは仕事に出かけようとしている時、妻に「上の娘に森に弁当を持たせてよこしてくれ。そうしないと、仕事が終わらないからね。」と言い、「道に迷わないようにキビを一袋持って行って道にまいておくよ。」と付け加えました。それで、太陽が森のちょうど中央にあるとき、娘はスープのどんぶりをもって出かけて行きました。しかし、野のすずめ、森のすずめ、ひばりやアトリ、つぐみやマヒワがずっとまえにキビをついばんでしまっていて、娘はお父さんの通った道を見つけられませんでした。適当に見込みをつけて娘はどんどん行きましたが、太陽が沈み夜になり始めました。暗闇で木々がガサガサ鳴ってフクロウが啼き、娘は怖くなりました。 すると、遠くに木々の間にチラチラ光る明かりが見えました。娘は、「あそこに人が住んでいるはずよ。一晩泊めてくれるわ。」と思い、明かりに近づいて行きました。ほどなくして娘は窓が全部明るくなっている家に着きました。娘がノックすると、中からガラガラ声が「お入り」と叫びました。娘は暗い入口に入り、部屋の戸をノックしまし
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苦楽をわかつ
昔、一人の仕立て屋がいました。この仕立て屋は短気な男で、おかみさんは善良で働き者で信心深い人でしたが、決して亭主の気に入りませんでした。おかみさんが何をしても、亭主は満足しなくて、ぶつぶつ文句を言い、叱り、ぶちのめしたりしました。 ついに役所がそのことを聞き及んで、男を呼んで来させ、よくなってもらおうとして牢屋に入れました。しばらくパンと水を与えられ牢屋に入れられていましたが、また自由になりました。しかし、もうおかみさんをぶたないで、結婚している人たちがそうであるように穏やかに、喜びと悲しみを分かち合って暮らす、と約束させられました。一時は万事うまくいっていましたが、亭主はまた元に戻って不機嫌で喧嘩早くなりました。おかみさんをぶってはいけないので、髪をつかんでひきむしるのでした。女は男から逃げて、庭に跳び出しましたが、男はものさしと鋏を持って追いかけてきて追い回し、ものさしや鋏を投げつけるだけでなく、手近の何でも投げる始末でした。女にあたると笑い、外れると怒鳴って悪態をつきました。こういうことがしばらく続いたので、近所の人たちがおかみさんを助けにのりだしました。 仕立て屋は裁判官の前に
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みそさざい
昔には、どの音にもまだ意味と意義がありました。鍛冶屋のハンマーの音がとどろくとき、「きたえろ、きたえろ」と叫んでいました。大工のかんなは削るとき、「ほら出るぞ、ほら出るぞ」と言いました。水車の車がカタカタ回り始めるなら、「助けて、神様、助けて、神様」と言いました。粉屋がずるい奴で水車を回すとき、水車は高度なドイツ語で話し、最初はゆっくり「そこにいるのは誰だ、そこにいるのは誰だ」と尋ね、そのあと素早く「粉屋、粉屋」と答え、最後にとても早口で、「堂々と盗む、堂々と盗む、一ガロンで三ペック」と言いました。 このころは鳥たちも誰でもわかる自分の言葉を持っていました。今はただチュンチュン、キィー、ピーピー、とか、時には言葉のない音楽のようにきこえるだけです。ところで、鳥たちは、治める者がいないままでいるのはもうやめて、自分たちの一人を王様に選ぼうと思いました。そのなかで一羽だけ、タゲリがこれに反対しました。タゲリは自由に生き、自由に死ぬつもりでいたので、心配して、あっちこっち飛んで、「どこへ行こうか?、どこへ行こうか?」と叫びました。寂しい誰も訪ねない沼地に引っ込んで、もう仲間のところに姿を現し
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かれい
魚たちは、自分たちの国で秩序が全然行き渡っていないので、長い間不満でした。だれも他の人のために脇によけたりしないで、みんな好きなように右や左に泳いだり、一緒にいたい人たちの間に突進したり、道をふさいだりしていました。そして強い魚は弱い魚を尻尾で突いて、追い散らしたり、さもなければさっさとのみこんでしまっていました。 私たちの中に法と正義を行う王様がいれば、どんなに喜ばしいでしょう、と魚たちは言って、水の中を最も速く進み、弱いものを助ける魚を自分たちの支配者に選ぼうと、一緒に集まりました。海岸のそばに列を作って並び、カワカマスが尻尾で合図をし、みんなスタートしました。矢のようにカワカマスがぱっと進み、ニシンが、セイヨウカマツカが、スズキが、鯉が、そして残り全員がでました。カレイですら、一緒に泳ぎ、レースに勝ちたいと望みました。突然「ニシンが一番だ、ニシンが一番だ。」と叫び声が聞かれました。「誰が一番だって?」と平べったく羨しいカレイは怒って叫びました。カレイはずっと後ろに残されていたのでした。「誰が一番だって?」「ニシン、ニシン!」が答えでした。「裸のニシンか。」と嫉妬深い動物は叫びまし
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「さんかのごい」と「やつがしら」
「群れにえさをやるのにどこが一番好きかい?」と男が年とった牛飼いに言いました。「ここですよ、だんな、草が良すぎでも悪すぎでもないところですよ。でないと駄目です。」「どうして駄目なんだ?」と男が尋ねました。「あそこの草原からあの憂鬱な鳴き声が聞こえますか?あれはサンカノゴイですよ。サンカノゴイは昔牛飼いでした。ヤツガシラもそうでした。こんな話ですよ。サンカノゴイは群れを花がたくさん生えている豊かな緑の草原に放しました。それで牛たちは荒々しくて手に負えなくなりました。ヤツガシラは高いやせ地の山に牛を駆り立てました。そこでは風が砂と遊び、牛たちはやせて力が無くなりました。夕方になって牛飼いたちは牛を帰らせようとしましたが、サンカノゴイは二度と牛を集められませんでした。牛たちはあまりに元気がよすぎて逃げてしまったんですよ。サンカノゴイは『来い、牛よ、来い、』とよびましたが、無駄でした。牛は呼び声に全然注意しませんでした。だけど、ヤツガシラは牛たちの脚を立たすことすらできませんでした。とても弱ってしまったんですよ。『立て、立て、立て』とヤツガシラは叫びましたが、無駄でした。牛たちは砂にねたままで
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ふくろう
二、三百年前、人々が今ほどずる賢くなく悪知恵が働かないとき、小さな町で奇妙なことが起こりました。どういうわけか、ワシミミズクという大ふくろうが一羽、夜の間に近くの森から町の人の納屋に入りこみ、このふくろうが現れると恐ろしい叫び声をあげる他の鳥たちを恐れて、夜が明けてもこの避難場所から二度と出ていこうとしませんでした。 朝に、下男はわらをとりに納屋に入って行った時、片隅にふくろうが止まっているのを見てひどくおどろいたので、逃げて行って、主人に、「生まれてこのかた見たこともない怪物が納屋にいて、いとも簡単に人を食いそうにして、目をぐるぐる回しているんです。」と知らせました。「お前というやつを知ってるよ。」と主人は言いました。「お前は野原でつぐみを追いかけ回す勇気はあるが、めんどりが死んでるのを見ると近くへ寄る前に棒を持たなくちゃいけないんだからな。わしが自分で行ってどんな怪物か見てこなくてはならぬな。」と主人は付け加え、全く平気で納屋に入って行き、辺りを見回しました。 ところが、自分の目で奇妙なゾッとする生き物を見たら、下男に負けず劣らずびっくり仰天しました。二回跳びはねて外へ出て、近所の
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月
昔、夜はいつも暗く空が黒い布のようにおおっている国がありました。というのはそこには月が昇らず、星も暗闇に輝くことがなかったからです。世界を創造したときは夜の光は十分あったものですから。あるとき、四人の若者がこの国を出て旅にでかけ、よその国に着きました。そこでは太陽が山のかげに沈んでしまったあと、樫の木に光る玉が置かれ、あたりに柔らかい光を投げかけていました。このため、太陽ほどまばゆくはありませんでしたが、何でもとてもよく見えて、見わけがつきました。旅人たちは立ち止まって荷馬車で通りすぎていく村人に、「あれはどういう明かりですか?」と尋ねました。 「あれはお月さまですよ。」と村人は答えました。「私たちの村長が三ターラーで買って来て、それを樫の木に止めたんです。村長は、いつも明るく燃えるように毎日油を注いでやりきれいにしておかなくてはいけないんですよ。その分私たちは村長に毎週一ターラー払うんです。」村人が行ってしまうと、旅人の一人が「このランプは役に立つぜ。故郷にこれと同じくらい大きい樫の木が一本ある。そこに吊るせるよ。夜に暗闇を手さぐりしなくてよくなれば、楽しいだろうな。」「いいかい、こ
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寿命
神様が世界を創って、それぞれの生き物の寿命を定めようとしました。すると、ロバがやってきて、「神様、私はどのくらい生きますか?」と尋ねました。「30年だ。」と神様は答えました。「それで満足か?」「ああ、神様」とロバは答えました。「それは長いですね。私の骨の折れる毎日を考えてください。朝から晩まで重い荷物を運び、他の人たちがパンを食べれるように粉ひき小屋までなん袋も穀物を引きずっていき、ぶたれたり蹴られたりする他は何も励ましてもらったり元気づけてもらったりしないのです。この長い年月を少し減らしてください。」すると神様はロバを可哀そうに思い、18年減らしてあげました。 ロバはホッとして去り、犬が現れました。「お前はどれくらい生きたいかね?」と神様は犬に言いました。「ロバには30年が多すぎたのだが、お前はそれでいいだろう。」「神様」と犬は答えました。「それが神様の思し召しですか?私がどれだけ走らないといけないかお考えください。私の足はそんなに長くもちません。それにいったん声が出なくなり吠えられなかったり、歯が無くなってかみつけなくなれば、私に残るのはすみからすみへ走って行き唸るだけです。」神様
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死神の使いたち
古代に、ある時巨人が広い大通りを旅をして歩いていました。すると突然見知らぬ男が前に飛び出して、「止まれ。あと一歩も歩くな。」と言いました。「何だと?おれが指の間でつぶせるやつが道をふさぎたがってるわい。」と巨人は叫びました。「ずいぶん思い切った真似をするじゃないか、お前は誰だ?」「わしは死神じゃ。」とその男は答えました。「誰もわしにははむかえない。そしてお前もわしの命令に従わねばならぬ。」しかし巨人は断って死神と戦い始めました。それは長く激しい戦いでしたが、とうとう巨人が優勢になりこぶしで死神を打った結果、死神は石のそばに倒れました。巨人は道を進み、死神は負けてそこに倒れたまま、とても弱ってもう起きあがれませんでした。「わしがここの隅に倒れていれば、どうなるかのう。世界の誰も死なないで、人間があふれかえり、お互いに立ってる隙間もなくなるぞ。」と死神は言いました。 そのうちに若い男が道をやってきて、丈夫で健康な男で、歌を歌いながら、あちこち見まわしていました。男は半分気を失っている男を見ると、同情してその男のところへ行き、起きあがらせ、自分のびんから気つけの飲み物を口に注ぎ入れ、その男が
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プフリーム親方
プフリーム親方は背が低くやせていましたが、元気のよい男で一瞬たりともじっとしていませんでした。顔は、上を向いた鼻がただ一つ目だった特徴で、あばたがあり死人のように青ざめていました。髪はもじゃもじゃの白髪で、目は小さいけれど、ひっきりなしに辺りを見ていました。親方は何でも見て、何でも文句をつけ、何でも一番よく知っていて、いつも自分が正しいのでした。通りに出ると、オールでこぐように両腕を振って歩き、あるときは女の子の桶にぶつかって高くはねとばし、その子が運んでいた水で自分がずぶぬれになりました。「ばかめ!」と親方は、ぶるっと震えながら女の子をどなりました。「わしが後ろを来ているのがわからなかったのか!」 仕事は靴屋で、仕事をしているときはやたら力を入れて糸を引っ張るので、遠くに離れていない人は誰でもこぶしをうちこまれました。一カ月以上親方のところにいる職人はいませんでした。というのはどんなに良い仕事をしても親方は必ず何か文句をつけたからです。縫い目の大きさがそろっていないというときもあれば、靴が片方大きいとか、かかとが片方高いとか、皮を小さく切りすぎるとかいうときもありました。親方は「待て
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泉のそばのがちょう番の女
昔、とても年とったおばあさんがいて、山あいの人里はなれた空き地にがちょうの群れと一緒に住み、そこに小さな家をもっていました。その空き地は大きな森に囲まれ、毎朝おばあさんは松葉杖をついてよたよた森へ入って行きました。ところがそこではとても元気で、おばあさんの年の割には人が想像もつかないほどしっかりして、がちょうの草を集め、手が届くだけの野の果物を摘み、全部背負って家へ運びました。重い荷でおばあさんが地面に押しつぶされたかと誰でも思ったでしょうが、いつも無事に家に持ち帰りました。誰かと会うと、いつもとても礼儀正しく挨拶しました。「村人さん、こんにちは、いいお天気ですね。ああ、私が草を引きずっているので驚いていらっしゃるんでしょうが、誰でも重荷を背負わなくてはいけないですからね。」それでも、人々はできることならおばあさんと出会いたくなくて、回り道をする方を好みました。息子たちと一緒にいる父親がすれ違う時、父親は「あのばあさんに気をつけるんだよ。手袋の下に鉤づめがあるんだからね。あれは魔女だよ。」と囁きました。 ある朝、ハンサムな若い男が森を通っていきました。太陽が輝き、鳥たちがさえずり、涼し
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エバのふぞろいの子どもたち
アダムとイヴは楽園から追放された後、不毛の地に家を建て、額に汗してパンを稼ぐほかありませんでした。アダムは土を掘り起こし、イヴは糸を紡ぎました。毎年イヴは一人の子供を産みましたが、子供たちはみんな違っていて、可愛い子もいれば醜い子もいました。かなりの時が経ってから、神様は天使を遣わし、二人の家庭を見に行くと知らせました。 イヴは、神様がそんなに慈悲深いことを喜び、精を出して家をきれいにし、花で飾り、床に灯心草をまきました。それから子供たちを中に入れましたが美しい子供たちだけでした。イヴはその子たちを風呂に入れ洗って、髪をすき、きれいな服を着せ、神様の前で礼儀正しく謙虚にふるまうよう注意しました。神様の前で丁寧にお辞儀し、両手を差し出し、神様の質問には控えめに賢く答えるんですよ、とイヴはさとしました。 ところが、醜い子供たちは、姿を見せてはいけない、と言われました。一人は干し草の下に隠れ、別の子は屋根の下に、三人目はわらの中に、四人目はストーブの中へ、五人目は地下室に、六人目はおけの下に、七人目は酒樽の下に、八人目は古い毛皮のコートの下に、九人目と十人目はイブがいつも子供たちの服を作る布
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グリム兄弟のほとんどテイルズ
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