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グリム童話
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グリム童話: 子供たちと家庭の童話
グリム童話の一覧 (ページ 2)
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021
シンデレラ
金持ちの妻が病気になり、最期が近づいていると感じたので、たった一人の娘をベッドのそばに呼んで、「愛するわが子よ、良い子で神様を信じているんですよ。そうすれば神様がいつもお前を守ってくれます。私は天国からお前を見下ろしてお前の近くにいますからね。」と言いました。それで目を閉じ、亡くなりました。毎日娘は母親の墓に出かけては泣きましたが、信心深く善良なままでした。冬が来て雪が墓の上に白い覆いを広げ、春の太陽がまたその雪を溶かす頃には、男は別の妻をもらいました。 その女は家へ二人の娘を一緒に連れてきました。、娘たちは顔は美しくきれいでしたが、心は汚く真っ黒でした。それから可哀そうな継子の辛い時期が始まりました。「間抜けが私たちと一緒に居間に座っていていいの?パンを食べたい人は稼がなくちゃね。台所女中は外よ。」と二人は言いました。二人は娘からきれいな服をとりあげ、娘に古い灰色の上っ張りを着せ、木の靴をはかせました。「高慢な王女様をみてごらん。なんておめかししているの。」と叫んで笑い、娘を台所に連れて行きました。そこで娘は朝から晩まで、辛い仕事をしなければなりませんでした。日の出前に起き、水を汲み
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022
なぞなぞ
昔、王様の息子がいて、世界を旅してみたいという望みを抱き、一人の忠実な従者だけ連れてでかけました。ある日大きな森に着きましたが、すっかり暗くなってしまったのに、宿もみつからず、どこで夜を過ごしたらよいかわかりませんでした。すると、一人の娘が小さな家にむかっていて、近づいてみるとその娘は若く美しいのがわかりました。王子さまは、その娘に話しかけて、「娘さん、私と従者があの小さい家に泊まれないだろうか。」と言いました。すると娘は悲しげな声で「ええ、もちろんいいですよ。ただあまり勧めたくないのだけど。家に入らないで。」と答えました。王子さまが「どうして駄目なんだ?」と尋ねると、娘はため息をうき、「継母が魔法をするの。知らない人に意地悪いのよ。」と言いました。それで、王子さまは、魔女の家なんだなととてもよくわかったのですが、暗くなってこれ以上遠くへ行けないし怖れなかったので、その家に入りました。その老婆は暖炉のそばの安楽椅子に腰かけていましたが、赤い目で王子様を見て、愛想のいい振りをして、「今晩は。座って休んでください」と言いました。老婆は火を扇いで、小さな鍋で何かを煮ていました。それで、娘は二
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023
はつかねずみと小鳥と腸づめの話
昔、ネズミと鳥とソーセージが仲間になり、一緒に所帯を持って、仲良く幸せに暮らし、財産も増えました。鳥の仕事は毎日森へ飛んで行き、木を持ち帰ることでした。ネズミは水を運び、火をたき、食卓を整えるのが仕事で、ソーセージは料理をしました。暮らしが豊か過ぎる人はとかく目新しいことをやってみたくなるものです。ある日、鳥は別の鳥に会い、自分の素晴らしい暮らしぶりを語り自慢しました。ところが、相手の鳥は言いました。「あんたはきつい仕事をうけもって、かわいそうなおばかさんね、家にいる二人は楽しいでしょうね、だってネズミは火をおこし、水を運んで、あとは食卓を整えるように呼ばれるまで自分の部屋に行って休んでいるわけよ。ソーセージは鍋のそばにいて食べ物がよく煮えるか見て、食事の時間に近くなったら、おかゆとか野菜の間を一、二回転げ回るだけでバターや塩味がついて、はい準備OK。あんたが家に帰り、重い荷物を下ろすと、三人は食卓に座り、食事が終わると次の朝までたっぷり眠る。それが素晴らしい暮らしってわけだ。」 次の日、鳥は、相手の鳥にそそのかされて、もう森にいく気がしなくなって、自分はもう長く召使の役をやって馬鹿に
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024
ホレのおばさん
昔、娘が二人いる後家が住んでいて、娘の1人はきれいで勤勉でしたが、もう1人は醜く怠け者でした。しかし、醜く怠け者の方を、自分の本当の娘なので、はるかにかわいがりました。もう1人は、継子なので、仕事を全部させられ、その家のシンデレラになるしかありませんでした。毎日、可哀そうな娘は道の井戸のそばに座り、指が出血するまで糸を紡ぎに紡いでいました。ある日のことでした。杼(ひ)に血がついたので、そのしみを洗い流そうと井戸の水に浸しました。ところが、手からすべって井戸の底に落ちてしまいました。泣き出して継母のところへ走り、不幸な出来事のことを話しました。 しかし、継母は厳しく叱り、「自分で杼を落としたのだから、自分でとりださなくちゃだめ。」と無慈悲に言うのでした。それで娘は井戸に戻りましたがどうしたらよいかわかりません。悲しい心で、杼を取りに井戸に飛び込み、気を失いました。そして、目を覚まし意識を取り戻すと、太陽が輝き何千もの花が生えているきれいな草原の中にいました。この草原を通っていって、とうとうパンがいっぱい入っているパン焼き釜に着きました。パンは「出して!ああ、出してよ!出して!こげちゃうよ
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025
七羽のカラス
昔、息子は7人いるのに、どんなに望んでも娘は1人も生まれない男がいました。とうとう再び妻のお腹が大きくなり、生まれてみると女の子でした。喜びは大きかったのですが、子供は病弱で小さかったので、その弱さのため個人で洗礼をうけさせねばなりませんでした。父親は息子の1人を大急ぎで洗礼の水を取りに泉に行かせました。他の6人も一緒に行き、それぞれが一番に水を入れたがったので、水入れが井戸に落ちました。みんなそこに立ち尽くし、どうしたらいいかわからなくて、誰もあえて家に帰りませんでした。なかなか帰ってこないので、父親は我慢できなくなり「悪い子たちだ、何か遊んでいるうちにきっと忘れてしまったに違いない」と言いました。女の子が洗礼を受けないで死ななければいけないだろうと恐れて、怒りにまかせて、「あの子たちがみんなカラスに変えられたらいいのに。」と叫びました。その言葉を言うやいなや、頭上で翼の羽ばたきが聞こえ、見上げると7羽の真っ黒なカラスが飛んで去っていくところでした。 両親はその呪いの言葉を取り返すことはできませんでした。七人の息子を失ってどんなに悲しくても、まだ幾分か小さな娘に慰められました。その娘
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026
赤ずきん
昔、かわいい小さな女の子がいました。誰でもその子を見ると可愛がりましたが、特におばあさんが一番で、子供にあげないものは何もないほどの可愛がりようでした。あるときおばあさんは赤いビロードの頭巾をあげました。その頭巾は子供にとてもよく似合ったので子供は他のものをかぶろうとしなくなり、それでいつも赤頭巾ちゃんと呼ばれました。 ある日、おかあさんが赤頭巾に言いました。「おいで、赤頭巾、ここにケーキが一つとワインが一本あるわ。おばあさんのところへ持って行ってちょうだい。おばあさんは病気で弱っているの。これを食べると体にいいのよ。暑くならないうちにでかけなさい。行くとき、ちゃんと静かに歩いて、道をそれないのよ。そうしないと転んでビンを割って、おばあさんは何ももらえなくなるからね。部屋に入ったら、お早うございます、と言うのを忘れちゃだめよ。ご挨拶の前にあちこち覗き込んだりしないでね。」「よく気をつけるわ。」と赤頭巾はお母さんに言って、約束の握手をしました。 おばあさんは村から1.5キロ離れた森に住んでいて、赤頭巾が森に入ったちょうどそのとき、狼に会いました。赤頭巾は狼が悪いけものだと知らなくて、まっ
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027
ブレーメンの音楽隊
ある男がロバを飼っていました。このロバは何年も疲れ知らずに麦の袋を風車小屋まで運びましたが、力がなくなってきて、だんだん仕事に適さなくなってきました。それで主人はえさをやらないのが一番いいと考え始めました。しかし、ロバは風向きが悪いとわかって逃げ、ブレーメンへ行く道を出発しました。そこできっと町の音楽家になれるぞ、とロバは考えました。 しばらく歩くと、猟犬が道に寝て、疲れるまで走ったようにハアハアあえいでいるのに気がつきました。「犬くん、どうしてそんなにあえいでいるんだね?」とロバは尋ねました。「ああ」と猟犬は答えました。「僕は年寄りで、毎日弱くなってきて、もう猟ができないんだよ。主人は僕を殺そうとしたんだ。だから逃げて来たのさ。だけど、どうやって食っていったらいいんだろう?」「いいこと教えようか」とロバは言いました。「僕はブレーメンへ行って、そこで町の音楽家になるんだ。僕と一緒に行って君も音楽家の仕事をしないか。僕はリュートを弾く、きみはティンパニをたたくんだ。」 猟犬は賛成しました。それで二匹で進んで行きました。まもなく、猫に出会いました。猫は三日続きの雨のような顔をして道に座って
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028
歌う骨
昔、ある国で、農地を荒らし、家畜を殺し、牙で人の体を引き裂くイノシシがいて、人々は大いに嘆いておりました。王様は、この悩みの種を国からなくしてくれる者に沢山のほうびをとらすと約束しました。しかし、その獣はとても大きくて強いので、誰もあえてそれが住んでいる森に近づこうとはしませんでした。とうとう王様は、そのイノシシをつかまえるか殺した誰でも自分の一人娘を妻にできるとお触れを出しました。 さて、その国に、貧しい男の息子の二人兄弟が住んでいました。兄はずる賢く抜け目がないのでうぬぼれから、弟は素朴で真面目なので親切心から、この危険な仕事を喜んでひきうけると名乗りを上げました。王様は「もっと確実に獣を見つけるためには、二人は森へ反対側からはいらねばならない。」と言いました。それで兄は西側から、弟は東側から入りました。弟が少し行くと、小人が彼に近づいてきました。彼は手に黒いヤリを持ち、「お前の心は純粋でよいからこのヤリをあげよう。このヤリでお前は堂々とイノシシを攻撃できる、そしてそれはお前に危害を加えないのだ。」と言いました。弟はその小人に礼を言い、ヤリを肩にかけると、恐れることなく進んでいきま
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029
金の毛が3本生えた鬼
昔、1人の貧しい女がいて、男の子を産みましたが、羊膜を付けて生まれたので14歳になると王様の娘を妻にするだろうと予言されました。その後まもなく、たまたま王様が村にやってきて何かニュースがあるかと尋ねると、誰も王様だと知らなかったので、人々は「羊膜をつけた子が生まれましたよ。そんなふうに生まれた子は何をしてもうまくいくんです。14歳になると王様の娘を妻にするだろうと予言もされています。」と答えました。 王様は、悪い心をもっていたので、その予言に怒って、両親のもとへ行くと、とても愛想良くし、「貧しい人達よ、子供を預からせてくれれば世話をするよ。」と言いました。初め両親は断りましたが、その見知らぬ人が沢山の金をくれると言うので、「幸運の子供なのだから、その方が万事うまくいくにちがいない」と考え、とうとう承諾し、子供をあげました。 王様は子供を箱に入れ、馬に乗っていきましたが、深い川のところまで来ると、箱を川に投げ入れ、「これで望ましくない求婚者から娘を自由にしたわい。」と考えました。 しかし、その箱は沈まず、船のように浮かんで、一滴の水もしみ込みませんでした。そして、王様の首都の2マイル内ま
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030
しらみとのみ
シラミとノミが一緒に所帯をもち、卵の殻でビールを作っていました。するとシラミが中に落ちてやけどをしました。これを見てノミが大声で悲鳴をあげました。 すると部屋の小さい戸が言いました、「ノミさん、どうしてわあわあ言ってるの?」「シラミがやけどしたから」それで小さな戸はギイギイきしみだしました。 これですみの小さなほうきが言いました、「どうしてギイギイきしんでるの?」「ギイギイきしまないでいられない。シラミがやけどした。ノミが泣いている。」それで小さなほうきは、やみくもに掃きだしました。 すると小さな荷車が通りかかり、言いました。「ほうきさん、どうして掃いてるの?」「掃かずにいられない。シラミがやけどした。ノミが泣いている。小さな戸がギイギイきしんでいる。」すると小さな荷車は「それじゃ僕は走ろう。」と言って気が狂ったように走りだしました。 それで荷車が走ったそばにいた燃えがらの山が言いました、「荷車さん、どうしてそんなに走ってるの?」「走らずにいられない。シラミがやけどした。ノミが泣いている。小さな戸がギイギイきしんでいる。小さなほうきが掃いている。」燃えがらの山は「そんじゃ私はぼうぼう燃
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031
手なしむすめ
昔、ある粉屋が住んでいましたが、だんだん貧しくなっていき、とうとう風車小屋とその後ろにある大きなりんごの木以外何もなくなりました。あるとき、森へ木を取りに行くと、会ったことのない老人が近づいてきました。「どうして苦しんで木を切るんだい?お前を金持ちにしてやろう、風車小屋の後ろに立っているものをくれると約束してくれたらね。」と言いました。 粉屋は「それっていったい何だろう?ーああ、りんごの木か」と思い、「いいよ」と答え、その見知らぬ人に約束を書いて渡しました。しかし、その男はニヤニヤしながら、「3年経ったら、自分のものをとりにくるから」と言うと行ってしまいました。粉屋がうちに帰ると、妻が出迎えて「ねえ、あなた、このお金は急にどこから家の中に入ったのかしら?あっという間にどの箱も引き出しもいっぱいなのよ。誰も運んでこなかったし。どうしてこうなったかわからないわ。」と言いました。「森で会った知らない人が、大きな財産をくれると約束してくれたんだよ。おれは、お返しに、風車小屋の後ろに立っているものをあげると約束したんだよ。-大きなりんごの木をあげても全然構わないもんな。」と粉屋は言いました。妻は
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032
ものわかりのいいハンス
ハンスの母が、 「ハンスや、どごさ 行ぐの?」と尋ねました。 「グレーテルの どごさ」とハンスは答えました。 「じょずに やるんだよ」 「うん、じょずに やるよ、せばな、おかさん」 「行て こへ、ハンス」 ハンスはグレーテルの家に行きます。 「え日だねぇ、グレーテル」 「よぐ 来たねぇ、ハンス。あんた、どした ええもの 持て きた?」 「なも 持て こねよ。何が もらて行きて。」 グレーテルは、ハンスに針を一本やります。 「せばな、グレーテル」 「せば、ハンス」 ハンスはもらった針を干し草車に刺し、車のあとについて家に帰ってきます。 「たんだいま、おかさん」 「ハンス、帰たが、おめ、いんままで どごに いだだ?」 「グレーテルどごに いだや」 「おめ、グレーテルさ なに 持て いて けだの?」 「なも 持て いがねよ、もらて きたよ。」 「グレーテルは 何 くれだ?」 「針だよ」 「針 どごさ やた?ハンス」 「干し草車さ 刺したや」 「ばがだごと、さねでよ、ハンスや、針だば 袖さ 刺して おぐもんだね」 「どでも いでばな、おかさん、こんだだば、もと じょずに やるね」 「ハンスや、
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033
三つの言葉
昔、年老いた伯爵がスイスに住んでいました。息子が一人いましたが間抜けで何も覚えられませんでした。それで父親は「よく聞け、どんなに努力してもわしはお前の頭の中に何もいれられない。お前は今から行かなくてはならない、名高い先生の世話にあずける。その先生がお前に何ができるか見よう。若者は見知らぬ町に送られ、丸1年その先生と一緒にいました。この期間の終わりにまた帰宅したので、父親は「さあ、息子よ、何を覚えた?」と聞きました。「お父さん、犬が吠えるとき何というか覚えました。 「主よ、哀れみたまえ!」と父親は叫びました。「お前が覚えたのはそれだけか?お前を別の町の別の先生のところへ送ろう。」若者はそこへ連れて行かれました。そしてこの先生とも同じように1年過ごしました。帰宅すると、父親は再び「息子よ、何を覚えた?」と聞きました。「おとうさん、小鳥がなんというか学びました。」と若者は答えました。すると父親は怒り狂って「このふつつか者め!お前は貴重な時間を使い何も覚えなかった。わしの前にでてくるのが恥ずかしいと思わんか?お前を3番目の先生に送ろう。しかし今度もまた、何も覚えなければわしはもうお前の父ではな
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034
知恵者エルゼ
昔、賢いエルシーと呼ばれた娘がいる男がいました。娘が大人になったとき、父親が「娘を結婚させよう」と言い、母親は「ええ、もらってくれるだれか来てくれるといいんですが」といいました。とうとう一人の男が遠くからやってきて、妻にほしいと申し込みましたが、男はハンスと言い、賢いエルシーが本当に頭がよくなければいけないという条件をつけました。「ああ」と父親は言いました。「娘にはたくさん分別がありますよ。」そして母親は、「まあ、あの子は風が通りを吹いてくるのが見えるし、ハエが咳き込んでいるのがきこえますよ。」と言いました。 「なるほど」とハンスは言いました。「もし本当に頭がよくなければ、もらいませんよ。」みんなが夕食の席について食べ終わったとき、母親が、「エルシー、地下室へ行ってビールをとっておいで」と言いました。すると、賢いエルシーは壁からジョッキをとり、地下室へ入って、退屈しのぎにふたをパパパッとたたきながら歩いていきました。下に下りると、椅子をもってきて、かがんで腰が痛くなったり思わぬ怪我をしないために、樽の前に置きました。それから自分の前にジョッキを置き、樽の栓を回しました。ビールが樽から出
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035
天国へ行った仕立て屋
あるとても晴れた日に、神様は天の庭で楽しもうと思い、一緒に使徒と聖者みんなを連れていきました。それで天国には聖ペテロしかいませんでした。神様は聖ペテロに、留守中誰も入れないように、と命じてあったので、ペテロは入口に立ち、番をしていました。まもなく誰か戸をたたきました。ペテロは、「そこにいるのは誰だ?何の用だ?」と尋ねました。「私は貧しい正直な仕立て屋です。どうか中へ入れてください。」とよどみなく返事がありました。「正直だとな」とペテロは言いました。「首つり台の泥棒のようにか。お前は手くせが悪く、人の服を切りとってきただろう。お前は天国に入れないよ。神様は留守中誰も入れるなと私に命じられたのだ。」「お願いです。ひとりでにテーブルから落ちる小さな布切れは盗みじゃありませんし、いちいち話をするほどのことでもありませんよ。ごらんください。足が悪いのです。ここまで歩いて足に豆ができています。もう戻ることはできないのです。お願いですから入れてください。汚れる仕事を何でもやります。子供たちをおんぶしたり、服を洗ったり、遊んでいるベンチをこすってきれいにします。子供たちの破れた服につぎ当てもします。」
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036
おぜんやご飯のしたくと金貨を生む騾馬と棍棒袋から出ろ
昔、一人の仕立て屋がいました。その男には息子が三人と、たった一匹のヤギがいました。しかし、そのヤギはミルクを出し、みんなを養ったので、良い物を食べさせるため、毎日牧草地へ連れて行かれました。息子たちが順番にそれをしました。あるとき、一番上の息子が、墓地へ連れて行きました。そこでは一番いい草がみつかり、やぎを食べさせ、そこで走り回らせました。夜に家に帰る時間になると、息子は、「ヤギや、十分食べたかい?」と尋ねました。ヤギは、「たくさん食べたよ、あと一枚の葉っぱもいらないよ、メエメエ。」と答えました。 「じゃあ、家に帰ろう。」と若者は言って、首の綱を握り、小屋へ連れて行き、しっかりつなぎました。「なあ」と年とった仕立て屋は言いました。「ヤギはえさをちゃんとたくさん食べたかい?」「ああ、たくさん食べたよ。もう葉っぱ一枚いらないよ。」と息子は答えました。しかし父親は自分で納得したくて小屋に行き、かわいいヤギをなでて、「ヤギや、満足してるか?」と尋ねました。ヤギは、「どうして満足できるんだい?溝の間を跳び回っていて、葉っぱは何もなかったよ。だから何も食べないで帰ったよ。メエメエ。」と答えました。
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037
おやゆびこぞう
昔、貧しいお百姓がいました。夜にお百姓がかまどのそばに座って火をかきおこし、おかみさんは座って糸を紡いでいました。その時、お百姓は、「子供がいないのはわびしいなあ。おれんちではとても静かで、よそんちでは賑やかでわいわいしてるもんなあ。」と言いました。「そうねぇ」とおかみさんは言ってため息をつきました。「たった一人でもいたら、その子がとても小さく親指くらいしかなくても、とても嬉しいし、それでも私たちはその子を心から可愛がるんだけどねぇ。」さて、おかみさんは具合が悪くなり、七か月経つと、子供を生みました。その子には手足はきちんとあったものの、親指くらいしか大きくありませんでした。それで二人は「おれらが望んだようになったんだ。これはおれたちの可愛い子供だよ。」と言いました。そしてその大きさから二人はその子を親指太郎と呼びました。二人は十分食べさせていましたが、子供は大きくならず最初のときのままでした。それでも利口そうにものを見て、まもなく賢く素早い子供だとわかりました。というのは親指太郎がやることは何でもうまくいったからです。 ある日、お百姓は森へ木を切りにいく支度をしていました。独り言のよ
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038
奥様きつねの結婚
1 昔、九本の尻尾がある古狐がいました。古狐は妻が自分に忠実でないと思い、妻を試してみようと思いました。長椅子の下に長々とねて、手足を動かさず、まるで死んだようにしていました。狐奥様は自分の部屋に上がって行き、ひきこもり、お手伝いさんの猫嬢がかまどのそばに座り、料理をしていました。古狐が死んだと知れると、大勢の求婚者たちが現れました。 お手伝いさんは誰かが玄関の戸をたたいているのを聞いて、でかけて戸を開けました。それは若い狐で、「何をしているんだい?猫さん。眠っているかい?起きているかい?」と言いました。「眠っていないわ。起きてるわよ。何を作っているか知りたい?バターでビールを煮ているの。夕食のお客さんになりません?」「いや、結構です、猫さん。狐奥様は何してますか?」と狐は言いました。 お手伝いさんは、「奥様は部屋にいて、ふさぎこんで嘆いています。だんなさまが亡くなったので泣いて目が真っ赤です。」と答えました。「では、是非伝えてください。お嬢さん。若い狐がここにいて、奥様に妻になって欲しがってると。」「わかりました。若いお方。」猫は階段を昇ります。タン、トン。猫は戸を叩きます。トン、ト
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039
小人の靴屋
第1話 靴屋が自分のせいではないのですが、とても貧しくなってとうとう一足の靴分の皮以外何も残らなくなりました。それで夜に、次の朝作りはじめるようと思った靴を切り取りました。気がとがめていないのでベッドに静かに横になり、神様にお祈りし、眠りました。朝に、お祈りをした後仕事を始めようとしたら、仕事台のうえに2つの靴が出来上がってあったので、ビックリし、どう考えたらよいのかわかりませんでした。靴を手にとってもっとよく見てみたら、1つも悪い縫い目がなく、とてもきれいに作られているので、腕試しをしようと作られたかのようでした。まもなくお客が入ってきて、その靴をとても気に入り、普通よりもっと多く支払いました。それで、そのお金で靴屋は2足分の皮を買うことができました。その皮を夜に切り抜いておき、朝に新鮮な気分で仕事に取りかかろうとしましたが、そうする必要がありませんでした。というのは起きたとき、靴はもう作られていて、買い手たちは文句のつけようがない出来なので、4足分の靴の皮を買うのに十分なお金を払いました。再び次の朝も靴ができていて、それがずっと続きました。靴屋が夜に切り取ったものが朝までに仕上がっ
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040
強盗のおむこさん
昔、粉屋がいました。この粉屋に美しい娘がいて、大人になったので、娘に準備してやり、よい結婚をさせたいと願いました。(もし良い人が来て娘を望んだら、その人に娘をやろう)と考えました。それからまもなく、娘を妻に欲しいという人がやってきて、とても金持ちのように見え、粉屋はその人に悪いところが見つからなかったので、娘を嫁にやると約束しました。しかしこの乙女は、一般の娘が婚約した男を好きなようには、この人を好きでなく、全く信頼しませんでした。この人を見たり考えたりするときはいつも虫唾が走りました。あるとき、男が娘に、「あなたは僕のいいなずけなのに、一度も家へきたことがありませんね。」と言いました。娘は、「あなたの家がどこかわかりませんもの。」と答えました。するといいなずけは、「僕の家はそこの暗い森にあります。」と言いました。娘は行かなくてすむような言い逃れをして、「そこの道がわかりませんわ。」と言いました。いいなずけは「次の日曜日にそこに僕を訪ねてきてください。もうお客たちを呼んでありますから。森の道がわかるように灰をまいておきますよ。」と言いました。 日曜になり、娘が行かなければならなくなると
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